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スタートアップ創業者の給与:スタートアップCEOとしてどのように給与を受け取るべきか
グローバル給与

著者
Deel Team
公開日
20 12月, 2024
最終更新日
31 1月, 2025

重要なポイント
- スタートアップの創業者にとって最も難しい問題のひとつは、いつ、どれくらい自分に給与を支払うべきかという点です。特に、事業の利益と自分自身の利益をどうバランスを取るのか課題となります。
- スタートアップ創業者の給与は、資金調達額、所在地、会社の規模、そして創業者自身の経済的なニーズなど、さまざまな要因によって決まります。
- 2023年のスタートアップ創業者の平均給与は、年間約148,000ドルでした。
スタートアップ創業者として、複雑な意思決定を数多く行う必要があります。その中でも最も難しいのが、自分の給与をどのように設定するかという問題です。
事業の成長を追求する気持ち、個人のニーズ、日々の生活費をどうカバーするかを常にバランスする必要があります。事業が十分な利益を上げていない初期段階で給与を設定するのも、資金調達のラウンドが進んだ後の給与を決定するのも、同じくらい難しい課題です。
Kruze Consultingのデータによると、CEOの給与は0ドルから30万ドル以上に及び、この問いに単純な答えがないことを示しています。このガイドでは、意思決定に影響を与える要因を把握し、自分自身とスタートアップの両方にとって最良の選択をするための方法を解説します。
創業者の給与を設定する5つの一般的な方法
事業運営に十分な資本を確保しつつ、創業者の労働に見合った適正な報酬を確保することは容易ではなく、さまざまなアプローチが必要になることがあります。以下は、スタートアップ創業者が自分に給与を支払う際によく使われる5つの方法です。
給与
自分に給与を支払うことは、創業者が会社内での役割に対する報酬として定期的な支払いを受け取ることを意味します。この給与はスタートアップの給与体系の一部となり、適用される税金や法的要件に従います。
給与を設定する主な理由
- 個人の経済的ニーズ: 生活費や学生ローンの返済、貯蓄目標を達成するために経済的安定を確保できます。
- 適正な報酬: 創業者がスタートアップに注ぎ込む時間と専門知識に対して、公平な報酬を確保します。
- 専門性と信頼性: 創業者として給与を受け取ることは、事業をプロフェッショナルな組織として扱っていることを従業員、投資家、パートナー、顧客に示す重要な手段となります。
給与を選択する場合、他の従業員と同様に所得税を支払う必要があります。また、スタートアップ側も給与税(例: 米国のFICA税)を支払う必要があります。
配当金(Dividends)
配当金で自分に報酬を支払う方法は、事業の利益を創業者に配当金として分配することを指します。給与とは異なり、配当金は定期的な支払いではなく、事業が利益を生み出した際に適宜支払われます。
配当金を利用するメリット
- 税金の負担軽減: 配当金は一部の地域で給与所得よりも低い税率で課税される場合があり、全体的な税負担を軽減できる可能性があります。
- タイミングの柔軟性: 配当金の支払いは会社の経営陣や取締役会の裁量に委ねられるため、利益やキャッシュフローの状況に応じて調整が可能です。
- 利益生成との整合性: 配当金を通じて報酬を受け取ることで、個人の収入をスタートアップの成功や財務状況に合わせて調整できます。
この種の支払い形態は、通常の給与所得と比較して税務上の影響が異なるため、すべてのスタートアップや法域に適しているわけではない点に注意が必要です。
また、自身に支払うことのできる配当額は、利用可能な利益と会社における自身の持ち株比率に依存します。配当として支払うことを選択する前に、スタートアップの財務状況を評価し、十分な利益が分配可能であることを確認してください。
株式(Equity)
自分に株式で報酬を支払う場合、創業者は会社の所有権を付与される形で報酬を受け取ります。この株式は優先株式、普通株式、ストックオプションなど、会社の構造や発展段階によって形態が異なります。
株式で支払うメリット
- キャッシュの制約を軽減: 株式による報酬は、事業の現金を節約し、製品開発やマーケティングなどの他の重要な分野に資金を回せます。
- 利益の整合性: 株式を受け取ることで、創業者の利益が事業の成功と密接に結びつき、長期的な成長や収益性を重視するインセンティブを提供します。
- 長期的な報酬: 株式報酬は、IPO(新規株式公開)や買収などの流動性イベントの際に大きな財務的リターンをもたらす可能性があります。
株式報酬を設定する際には、ベスティングスケジュール(権利確定スケジュール)が適用されることが一般的です。このスケジュールにより、株式の所有権が段階的に確定していきます。
株式報酬は、創業者が会社に対するコミットメントを持続させ、方向性を共有するために、ベスティングスケジュール(権利確定スケジュール)が設定されることが一般的です。このスケジュールでは、創業者の所有権が完全に確定するまでの期間が定められています。
一般的なベスティング期間は3〜4年で、1年のクリフ(最初の1年間は権利が発生しない期間)が設けられる場合が多いです。
スタートアップがIPOや買収などの重要なマイルストーンに到達すると、株式を売却して利益を得るチャンスがあります。この株式の価値は、取引条件や会社の成功度によって決まります。
オーナーズドロー
オーナーズドローとは、スタートアップ創業者が会社の利益を個人的に引き出して報酬とする方法です。この手法は、個人事業、パートナーシップ、LLC(有限責任会社)などの小規模ビジネスやスタートアップでよく使用されます。
この方法を選ぶ理由には、以下のような利点があります。
- 柔軟な報酬設定: オーナーズドローは、スタートアップの収益が不規則な場合でも、事業状況に応じて報酬を調整できます。
- 会計の簡略化: 正式な給与計算や税金の控除を必要としないため、会計処理が簡単になります。
- 税効率: 個人事業やパートナーシップでは、給与税ではなく個人所得税の対象となるため、税務上のメリットを得られる可能性があります。
オーナーズドローを利用する際は、以下の財務状況を確認し、利益や留保利益が十分にあるか判断する必要があります。
- 損益計算書
- 貸借対照表
- キャッシュフロー計算書
引き出した金額は、オーナーエクイティの減少として記録し、会社の財務記録に正確に反映させる必要があります。
なお、オーナーズドローは、オーナーの人数が限られた小規模ビジネスやスタートアップに適しています。ビジネスが成長し、投資家や従業員が増えると、給与や株式報酬など他の報酬形態が一般的になります。
利益の再投資
利益の再投資とは、個人報酬を取らずに会社の成長や運営に利益を充てる方法です。以下の用途に再投資されることが多いです。
- 研究開発
- マーケティング
- 人材採用
- インフラ拡大
- 資産取得
利益の再投資には次のようなメリットがあります。
- 成長の加速: 製品開発やマーケティング、新市場進出に資金を振り向けることで、会社の成長を加速させることができます。
- 企業価値の向上: 戦略的な再投資により、企業価値を高め、投資家を引き付けると同時に将来の資金調達の可能性を広げることができます。
- 長期的な安定性: キャッシュを維持し、運営資金を確保することで、財務的な課題や景気の低迷に耐える力を持てます。
利益を再投資することはスタートアップの長期的な成功に貢献しますが、創業者は再投資と自身の経済的ニーズの間でバランスを取ることが重要です。
すべての利益を再投資することは、状況によっては実現不可能または持続不可能な場合もあります。この支払い方法を選択する場合、再投資が成長を促し価値を生み出せる領域を特定する必要があります。そのためには、市場動向や顧客の需要、競争環境、および社内の能力を分析し、最も戦略的に資金を配分すべき領域を判断します。
さらに、KPIや財務指標、および成長目標への進捗状況を定期的に見直すことで、再投資戦略の効果を評価し、必要に応じて調整を行うことができます。
創業者給与の決定における法的・財務的考慮事項
スタートアップ創業者の給与を決定する際には、以下の要素を検討する必要があります。
- 業界の基準: あなたの分野で一般的な創業者給与の水準はどのくらいか?
- 事業のステージ: 資金が限られた初期段階か、収益を生み出している段階か?
- 投資家の期待: 既に資金調達を行っている場合、投資家のガイドラインはあるか?
- 専門性と市場価値: 成功に不可欠なスキルや経験を持っているか?
- 役割: CEO、CTO、COOなどどの役割を担っているか?
- 長期的な持続可能性: 個人の必要を満たしつつ、事業の成長を支えられる給与設定が可能か?
また、個人とビジネスの財務を分けることが重要です。これにより以下が可能になります。
- 法的保護: 個人財産をビジネスの負債から守る。
- 財務の透明性: ビジネスの収益、費用、利益を正確に管理し、税務申告や報告を容易にする。
- プロフェッショナリズム: パートナーや投資家からの信頼を高める。
創業者の給与を設定する際の法的な影響は、事業が設立された国の法律や選択した事業形態によって異なります。
たとえば、個人事業主の場合、事業と個人は同一の法的主体と見なされます。このため、事業の全利益を受け取る権利がありますが、すべての事業上の責任も個人で負うことになります。そのため、事業から直接お金を引き出すことが可能です。
他の事業形態、例えばパートナーシップでは、責任や利益をパートナーと共有します。一方、LLC(有限責任会社)の場合、利益と損失は所有者の個人所得税申告に反映される仕組みです。
また、事業構造によって、登録、ライセンス、許可証、年次報告などのコンプライアンス要件が異なります。特に、法人は他の事業形態よりも厳しいコンプライアンス要件を持つ場合が一般的です。
スタートアップ創業者はどれくらいの給与を取るべきか?
前述のとおり、給与を決定する際には、スタートアップがシリーズA以前の段階にあるのか、すでに収益を上げているのか、あるいは他に収入源があるのかなど、さまざまな要因が影響します。
最新データによると、スタートアップの創業者や共同創業者、CEOの世界平均給与は0ドルから100万ドルの範囲で、中央値は年間10万ドルです(出典:Pilot.com)。
Source: Pilot.comによると
ベンチャーキャピタル(VC)から支援を受けている創業者は、まだ資金調達を行っていない創業者よりも高い給与を受け取る傾向があります。Pilotの調査によれば、年間給与が10万ドルから20万ドルの創業者の90%以上がVC資金を受けているスタートアップを運営しています。
地理的要因によっても給与データは異なり、サンフランシスコ・ベイエリア(シリコンバレー)やニューヨークが最も高い水準です。
また、資金調達ラウンドを経るごとに創業者の給与は増加する傾向があり、シードラウンドでは約13万ドル、シリーズBでは約25万ドルに達します(出典:Kruze Consulting)。初期段階ではCTOの給与が高い傾向がありますが、後の資金調達段階ではCEOの給与が優位になります。
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免責事項: 本投稿は情報提供を目的としたものであり、法的および財務的なアドバイスを提供するものではありません。具体的なケースについては、財務アドバイザーや会計士などの専門家にご相談ください。