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PEリスク(恒久的施設リスク)を回避するためのEORサービス(雇用代行)
法務 & コンプライアンス
雇用主記録

著者
Deel Team
公開日
23 12月, 2024
最終更新日
31 1月, 2025

重要なポイント
- 外国で法人を設立せずに収益を上げる場合、企業はPEリスクにさらされる場合があります。
- DeelのようなEORサービス(雇用代行)を利用すれば、外国で法人を設立することなく従業員を合法的に雇用でき、このリスクを大幅に軽減できます。
- Deelは世界中の350社以上の労働法および会計の専門パートナーとともに、あらゆる国や地域で、海外バックオフィス業務を常に最新かつ正確な状態に保つ専門知識を提供しています。
他国で恒久的施設の保有が認定されると、非常に大きなリスクが発生します。
法人所得税の納付義務が発生するほか、罰金や利息の支払い、さらには追加の現地税務登録が必要になる可能性があります。
このリスクを完全に排除するためには、事業活動を法人のある国の中のみにとどめなければなりませんが、それではグローバル企業としての成長は望めません。
その課題の解決として、グローバルな雇用代行サービス(EOR)を通じて従業員の雇用や給与支払いを行うことで、PEリスク(恒久的施設リスク)を大幅に軽減することができます。
現在Deelは世界最大のEORプロバイダーとして95カ国以上で法人を保有しており、世界中で20,000人以上の方々を雇用や給与計算などあらゆる観点でサポートしています。
本記事では、EORサービス(雇用代行)がどのようなサービスなのか、そしてグローバル事業展開におけるPEリスク(恒久的施設リスク)をEORがどのように軽減できるかをご紹介します。
EORサービス(雇用代行)とは何か?
EORサービス(雇用代行)は、グローバルPEO(プロフェッショナル・エンプロイヤー・オーガニゼーション)とも呼ばれ、企業が外国に法人を設立していない場合でも現地で合法的に雇用できる仕組みです。
EORサービス(雇用代行)では、クライアント企業に代わって代行業者が従業員を雇用し、現地の法律や労働規制に準拠した形で給与計算やその他の人事業務・管理タスクを行い、コンプライアンスの遵守も代行します。
ただし、EORサービスは人材の発掘や採用・審査には関与せず、適任者が選ばれた後にのみ利用可能です。
なお、フリーランスの雇用にはEORサービスは適用されません。(Deelにはフリーランスを雇用できる別サービスもございます。)
EORサービスで雇用された従業員はEORの給与計算体系に含まれますが、直接雇用の他従業員と同様、クライアント企業の事業に関連した業務を行えます。
EORサービスで雇用される従業員は、具体的な職務内容や責任が記載された現地仕様の契約書に署名する必要があります。
昨今ニーズが増えているEORのユースケースは「新しい国で事業を展開したいが、法人を設立するにはリソースやコストがかかりすぎる場合」です。 新しい国で事業展開をするには監査を受ける必要があり、人事業務やコンプライアンスを常に最新かつ正確な状態に保つ必要があります。 特にアメリカの場合は、年末にそれらに関連する税務報告を行う必要があり、これらの負担は非常に大きいです。 インフラを整えることなくどこでも誰でも雇用できるというソリューションは、グローバル企業にとって大きな力となります。
—Alex Bouaziz,
Deel 共同創設者 兼 CEO
EORサービス(雇用代行)
DeelのEORサービスでは、以下の煩雑な業務を1つのプラットフォームで完結し効率化します。:
- 各国・各地域の法律に準拠した雇用契約の作成
- 税金・各種認可・コンプライアンス関連の書類を収集し、監査に対応可能な形で管理
- 給与税・年金・その他現地政府へ支払う必要がある費用を正確に控除
- 200以上の通貨で、給与明細発行・従業員の銀行口座への直接送金(その他の支払い方法も選択可能)
- 競争力の高い福利厚生オプションの選択・提供
- 知的財産や従業員データの保護
- 従業員にかかる法的責任への全面対応
- 海外の従業員の経費・ボーナス・有給休暇等の管理
EORサービスの活用はどのようにPEリスク(恒久的施設リスク)回避に寄与するのか
「PE(Permanent Establishment / 恒久的施設)」という用語は税務の概念で、企業が海外で安定的かつ継続的な事業拠点を持ち、課税対象となる状態を指します。 この段階に達すると、企業は本国だけでなく、外国でも課税の対象となります。
各国には、企業の活動が短期間や一時的なものを超えて「PE(恒久的施設)」とみなされる基準があります。これに該当すると、その企業は二重課税の対象になる可能性があります。
PE(恒久的施設)と認定される主な条件は以下の通りです:
- 事業所・住所・銀行口座などの固定された物理的な拠点を持つこと
- 従業員が滞在国で収益を生み出す活動を行うこと
- PE(恒久的施設)が認定される上で必要な一定期間(地域の規則や税条約に基づく)が経過すること
- 親会社が従業員の活動を指示・管理していること
注)外国でのすべての事業活動がPEリスクを引き起こすわけではありません。収益を生まない活動の場合、PEリスクは発生しません。
PEリスクを減らすために、一部の企業は現地の法務および税務の専門家と協力し、事業運営を行っている国に外国子会社を設立します。これにより、税務上のメリットが企業に提供され、現地の税務当局とのコンプライアンスを確保することでPEリスクが減少します。外国子会社は親会社から独立して運営され、自己の資産と負債に責任を持ち、税務および規制の監視においては別個の法人と見なされます。
しかし、子会社設立には多くの費用とリソースが必要となる上、現地法令等に準拠した運営を常時継続しなければいけなくなるため、本業の事業に注力できなくなる可能性があります。
そのようなリスクを回避するという意味でも、多くの企業はEOR(雇用代行サービス)を利用します。 DeelのEORサービスでは以下のようなサポートを提供し、クライアント企業のPEリスク削減とバックオフィス業務の負担軽減に寄与します。
- 現地仕様の雇用契約書:Deelは350社以上の労働法および会計の専門家を有しており、各国や地域で常に最新の現地法令に準拠した雇用契約書を簡単に作成します。
- 各国の法定福利厚生の提供:国別に法律で定められている基準を満たす様々な福利厚生や保険などを提供します。
- 給与計算:各国法令や各通貨に合わせ給与計算ができる仕組みを提供します。これにより、国別に異なる外部委託企業を見つける必要がなくなります。
SiteMinder社のリソース削減とコンプライアンス強化を実現
2006年に設立されたSiteMinder社は、世界中のホテルや宿泊施設の営業・マーケティング・管理などあらゆる業務を包括的にマネジメントできるプラットフォームを提供しています。
SiteMinder社には世界中に従業員がおり、新しい事業所の設立も検討していたため、現地の最新の法令に遵守しながら運営しなければいけないことが常に課題でした。また、上場企業であり厳格な監査や規制遵守が求められていました。
"「Deelを活用することで、毎月約2~3日分の管理業務とコストを削減できました。 以前は世界中で複数の人が問題解決のため話し合ったり、手作業でプロセスを進めたりしていました。 複数国での給与計算やその他バックオフィス業務にかかるリソースが削減できました。」
- SiteMinder社 人事担当副社長 Bec Donnelly"
Deelを活用することにより、法令やタイムゾーン・通貨が異なる複数の国で簡単かつ正確に雇用できるようになり、給与の計算や支払いも問題なく行えるため、非常に有用なサービスであると実感しています。
各国・各地域の法令に準拠した雇用契約
EOR(雇用代行サービス)を通じて従業員を雇用する場合、EORがその従業員の法的な雇用主となります。EORは、現地の労働法に従って、契約書の作成、従業員の適切な分類、解雇手続きなど、従業員に関するすべての法的および税務責任を負います。
人事部門のマネージャーやCEOは、従業員のステータスに関係なく、すべてのタイプの従業員に対して現地仕様の契約を迅速に管理できる必要があります。もし企業が他国で事業を展開したいのであれば、数回のクリックで現地の契約にアクセスでき、現地の規制を遵守したうえで、現地通貨でサービスの支払いができる必要があります。
—Julien Couderc,
フランス担当リーダー兼事業拡大責任者
現地の雇用法は国によって異なり、契約の構造、雇用できる人材、法的権利、できる仕事の種類を決定します。いくつかの国では、法律が州や管轄区域によって異なる場合もあります。Deelのグローバル雇用比較ツールを使用すると、80カ国以上の現地法、福利厚生、祝日、最低賃金、従業員のオンボーディング時間を比較できます。
Deelは、各契約を現地法に合わせてローカライズし、社内の専門家が定期的に契約内容を見直して、法改正に対応します。国によっては、以下の具体的な権利が付与されます:
- 必須の福利厚生
- 地域ごとの祝日
- 休暇の権利
- 最低月収
- 労働者の権利
- 労働時間
また、給与税、現地政府の手数料、採用に関する書類(政府ID、評価、データ処理契約)、ビザ、労働許可証についても特定の要件があります。
Deelは、新しい従業員のオンボーディングプロセスを簡素化し、バックグラウンドチェックなど、コンプライアンス強化の手続きを組み込んでいます。Deelのダッシュボードから、従業員や契約者の現地仕様の契約を数分で編集、送信、署名できます。
国ごとに異なる法定従業員福利厚生
各国では、健康保険や雇用保険、社会保障、労災補償など、雇用主が提供しなければならない法定福利厚生が定められています。Deelの「福利厚生ツール」を使えば、新規国の法令で定められた福利厚生かつ競争力のある福利厚生を特定でき、法令順守しながら競争力を保つことができます。
Deelは、従業員が必要な現地の福利厚生を確実に受けられるようにするとともに、企業が提供したいオプションの福利厚生にも対応します。DeelのEOR(雇用代行サービス)は、グローバルな福利厚生を一括管理し、以下を支援します:
- 法令遵守の確保: Deelは従業員に正しい法定福利厚生を提供し、企業がコンプライアンス問題から守られるよう支援します。
- 競争力の維持: Deelの専門家が、現地の期待を満たす(または上回る)福利厚生パッケージの構築をサポートし、優秀な人材を引き付けます。
- 独自のプラン料金の提供: Deelのパートナーシップを活用し、団体プランや定期的な市場見直しを通じてコストを削減します。
- HRサービスの活用: Deelは、人事、給与、福利厚生を一つのプラットフォームでシームレスに管理し、人事業務を効率化します。
Deelは、現在の福利厚生を各国のニーズに合わせて調整したり、ベストプラクティスに沿った包括的なグローバル福利厚生戦略の構築を支援します。グローバルプランでは複数国で一貫性のある福利厚生を提供し、ローカライズプランでは各国固有の要件やニーズに対応します。
Deelのサービスでは法定福利厚生がすべてカバーされ、多くの国では、医療や年金のオプション追加も可能です。Deelは、企業が既に提供している多くの福利厚生にも対応しています。
グローバル福利厚生の管理についてさらに知りたい方は、Deelのオンデマンドウェビナーをご覧ください。30分間で、Deelの拡張および業務運営の専門家が以下を解説します:
- グローバル福利厚生を管理する重要性
- グローバル福利厚生とローカル福利厚生の管理の違い
- グローバル福利厚生プランに含めるべき内容
- DeelのEORサービスを活用したグローバル福利厚生の管理方法
国をまたいだ給与計算と税金の管理
EOR(雇用代行サービス)を利用すると、外国で働く従業員の給与計算や税金の支払いをすべてEORが代わりに行います。Deelでは、現地の法律に基づいた給与計算や、税金、保険料、福利厚生の処理を専門チームがしっかりサポートします。
例えば、手当やボーナスの変更が必要になった場合でも、Deelのシステムで簡単に対応できます。特別な支払いが必要な場合や、雇用終了の手続きもすぐに対応可能です。また、給与の支払いもシンプルで、会社からDeelに一括で送金するだけで、従業員の銀行口座に現地通貨で給与が直接振り込まれます。さらに、給与明細もきちんと発行されるので安心です。
解雇や退職金の手続き
グローバル企業が従業員を解雇する場合、その国の法律に従って手続きを進める必要があります。たとえば、事前の通知期間や退職金の支払い、未使用の有給休暇の管理などが含まれます。Deelは、これらの手続きをすべてサポートし、トラブルなく進められるようお手伝いします。
国際的な従業員への株式付与
EORサービス(雇用代行)を利用しても、従業員に株式報酬を提供できますか? 国によって異なりますが可能です。
EORサービス(雇用代行)を利用する従業員は直接的に貴社の給与体系に属していないため、「非適格株式オプション(NSO)」を使うのが最適な方法とされています。ほとんどの場合、EOR従業員への株式付与はボーナスとして扱われます。この場合、現地の法律や付与された株式の種類に基づき、通常の雇用税や所得税が適用されます。
さらに、EOR従業員に対する株式付与は「共同雇用」の再認定につながる可能性があり、結果として恒久的施設(PE)に関連するリスクを引き起こす可能性があります。しかし、Deelの法的枠組みはこのリスクを軽減するよう設計されています。
EOR従業員に株式を付与する他の方法としては、以下の選択肢があります:
- 会社から直接従業員への株式付与
- Deelを通じた株式増加権(SAR)やファントムストックの提供
- Deelを通じた株式付与(NSO、RSU、RTU、ワラント)
事例:Project44社がDeelで年間50万ドル以上を節約
Project44社は、サプライチェーンの改善を目指すソフトウェア企業です。シカゴを本社に置き、25か国に広がるグローバルな従業員を抱える同社は、複数の輸送モードをつなぐソリューションを提供し、サプライチェーンや物流の専門家が在庫を追跡できるようにしています。
Project44社はDeelを活用して、25か国で129人の新しいチームメンバーを採用しました。これまで使用していた他のEORサービスと比較すると、現在の従業員数に基づいて年間50万ドル以上のコスト削減を実現しています。
"Project44社のPeople SpecialistであるChloe Riesenberg氏は、次のように述べています。 「Deelでは、世界中で効率的にチームメンバーを採用するところから、従業員がいつでも質問できるポータルを提供することまで、すべてを解決する頼れる存在です。専属のカスタマーサクセスマネージャーのサポートも素晴らしく、私たちはDeelをとても気に入っています。」"
Deelで会社拡大リスクを回避する
DeelのEORサービスを利用することで、現地の法人やパートナーと連携し、法的な手続きを代行してもらうことができ、コンプライアンス違反のリスクを減らすことができます。
EORは、必要な機能を全て備えたグローバル雇用ソリューションです。従業員をEORに移管することで、企業は現地の労働法に準拠し、適切な税金を支払うことが可能になります。
—Steve Hoffman,
戦略的パートナーシップ担当
DeelのEORサービス(雇用代行)を利用することで、以下のことが可能になります:
- グローバル市場への進出やテストを簡単に行う
- 子会社を開設せずにフルタイムのリモートワーカーを雇用する
- 海外の労働法や規制に確実に準拠する
- フリーランスを雇う際のコンプライアンス違反や誤分類(ミスクラシフィケーション)のリスクを排除する
- 自社にない知識や運営の専門知識を活用する
DeelのEORサービスについてさらに詳しく学ぶか、30分の製品デモを予約して、質問を解決しましょう。
FAQs
EORサービスの料金はどのように設定されていますか?
EORサービスの料金は、基本的に月額制で設定されています。Deelでは、EORサービスの料金を透明性をもって提示しており、「Deel Shield」や「Global Payroll」などの追加サービスの見積もりも簡単に取得できます。 EORを利用して従業員を雇用する企業は、自ら現地法人を設立する必要がないため、法人設立にかかる費用を支払う必要がありません。一方、法人を独自に設立する場合、その費用は所在地、従業員数、コンプライアンス要件などに応じて異なります。
EORは知的財産の保護に役立ちますか?
知的財産(IP)に関する法律は国ごとに異なるため、EORを利用する際には、IP権を管理するための戦略が整備されていることが重要です。また、契約を各国の法律に準拠させるために、現地の法務専門家を紹介できる体制も求められます。Deelでは、契約に厳格なIP保護条項を盛り込んでおり、すべての知的財産は顧客企業に帰属する仕組みを整えています。
EORを使用すべきでない場合とは?
EORは便利な手段ですが、ターゲット国で法人設立が2か月以内に可能な場合や、Cレベルの役員を雇用するなど恒久的施設(PE)リスクが明確な場合には適していません。EORは、新しい市場に進出する際の短期的または長期的な解決策として活用できます。詳しくは「M&AにおけるEORの活用ガイド」をご覧ください。 EORを利用せず、独自に法人を設立すべき主な7つの理由
- 新しい市場の調査が終了し、物理的な拠点を持ちたい
- 初期設立費用を支払うための資本がある
- 継続的な人事、給与、コンプライアンス費用に必要な資金を確保できる
- 設立プロセスに必要な時間投資と理解ができている
- 自社の人事チームが現地の労働法に精通している
- 現地の給与プロバイダーに給与業務をアウトソーシングすることができる
- 継続的なコンプライアンスリスクを自社で管理できる準備が整っている
EORを使った場合、従業員の採用にはどのくらい時間がかかりますか?
コスト効率が良く、スピーディーに新しい市場へ進出できる点がEORサービスの大きなメリットの一つです。 Deelを利用すれば、他国で従業員を採用するのに通常わずか3日しかかかりません。一方で、Deelを利用しない場合、このプロセスには3〜5か月を要します。 また、グローバル給与システムの導入もDeelなら2〜3か月で完了しますが、個別に法人を設立する場合は3〜6か月かかることが一般的です。
Deelは競合他社と比較してどうですか?
比較項目 | 他社 | Deel |
---|---|---|
対象国 | Deelほど多くの拠点を所有している企業はおらず、いくつかの国の業務は外部委託をしている | 世界中に100以上の自社拠点を所有 |
コンプライアンス | 標準的な契約書と書類収集 | 契約書は四半期ごとにレビューされ、コンプライアンス書類の収集と管理が可能 |
サポート | メールのみのサポートで、対応時間は24時間以内 | 24時間365日対応のアプリ内サポートと専任の担当者がサポート |
価格 | 予想外の料金や予測できない月額料金が発生し常に変動する | 定額料金、想定外の追加料金なし |
セキュリティ | 多くはSOC2の基準に準拠しておらず、アプリ内でのバックグラウンドチェックや、アメリカ合衆国の海外資産管理局(OFAC)のチェックを実施していない。KYCチェックを提供しているところは少ない | IP権保護、KYC、OFAC、バックグラウンドチェック、GDPR、SOC2の準拠 |
Deelが他社とどのように比較されるかについてさらに詳しく知りましょう。こちらをご覧ください。ベンダーを比較する際には、EOR提案依頼書テンプレートを使って、ビジネスニーズに合った提案を各ベンダーに依頼できます。